2006年10月 渋滞緩和 模索続く(読売新聞より)
夕暮れの河原町通。片側二車線の道のバス専用レーンをふさぐ車、車、車……。市バスは停留所に着けることができず、走行車線で客を乗せる。さらに後方に車列が伸びていく。
そんな光景に、違法駐停車の禁止を呼びかける初老の男性指導員は「乗客さえ専用レーンで乗せられない。これが京の繁華街の現状です」とため息をついた。
国土交通省の1999年の調査では、主要道路の込み具合を示す混雑度は、京阪神の三都市で京都が大阪を抑えての一位。平日の大阪でも道路容量いっぱいの平均1・00なのに、京都は1・20。日中は常時、道路容量を二割オーバーして車が走っていることになる。
格安の一日フリー乗車券、繁華街を小刻みに停留して走る百円バス、携帯電話で運行の遅れがわかるサービス……。ここ四年でマイカー利用者を市バスに呼び戻す作戦が、次々に打ち出された。 地下鉄・東西線(醍醐〜二条)が開通した年の翌1998年度、市バスの利用者は1日平均358.000人。以来、毎年ほぼ1万人ずつ減り、昨年度は32万人に落ち込んだ。 一方、マイカーの1日あたりの利用は10年で12万人増え、133万人に。道路渋滞が市バスのダイヤの乱れにつながり、使い勝手はますます悪くなる。バス離れが加速し、またマイカーを呼び込むという悪循環に陥っている。 市交通局の真下清総務課長は「市バスこそ『最も身近な市民の足』との自負でやっているが、公共交通を根本からどう立て直すか、議論しなければならない」と唇をかんだ。
経営の悪化に苦しむ市バス事業は、3年前導入した勧奨退職制度などの影響もあり、累積赤字は5年前から100億円以上増えて163億円に。全職員3%以上の賃金カットや手当の見直しに加え、一部の路線運行を民間委託するなど、業務縮小の方向に進んでいる。「均一(基準)運賃の値下げなど、渋滞緩和に効果がある施策を思いついても収支悪化が心配されれば慎重にならざるを得ないのが実情」(同課長)という。
そんな中、注目され始めたのが 次世代型路面電車(LRT)だ。
地元経済界が三年前に「渋滞緩和に役立ち、観光都市のシンボルになる」と、都心へのマイカー進入を一部規制し、LRTに乗り換えてもらうなどの構
想を市に提案。低床で高齢者や障害者も乗降しやすく、排ガスを出さないため環境面で評価される一方、専用軌道の確保や需要が見通せないなどの課題が指摘さ
れ、構想は宙に浮いた。
車の増加に押され、姿を消した京都の市電(路面電車)。かつて市電撤去反対運動の先頭に立った元府立大学長広原盛明氏(65)が市長選に名乗りを
上げ、LRTの試験運行を公約に掲げた。一方、桝本頼兼市長(62)も十一月議会で、JR京都駅などを起点とする複数の具体的な検討路線案を明示したこと
で、構想が政治課題に上ってきた。
98年の市のアンケートで、期待する施策に市民は環境保全、交通対策を上位に挙げた。渋滞緩和にLRTはどう影響するのか。道筋はまだ見えない が、〈環境〉に軸足を置いた交通体系の改革論議が広がるなか、“マイカー依存”に限界を感じる市民の意識を具体化する行政の企画力が問われる。
北村隆一・京都大大学院教授(交通計画論)「古い道路網が渋滞を招いた側面もあるが、京の情緒も作っている。この構造と賢くつき合うことが市民の宿命。京都議定書が締結された都市として市民の間に公共交通の公益性を考え直す機運が高まるのを期待したい」
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